日本一の総長は、本当は私を溺愛している。
悲鳴が口を出ることなく布で口を塞ぐ。



もちろん縛ったのは七だ。



私は正直近づきたくもない。



七が連れて行くのを眺めながら
ゆっくりと紅茶を飲む。



「五。
いるでしょ?」



微かに屋根にいる気配が揺れる。



きっと赤瀬も気づいてなかったもう1人。



気づかれたことに対する驚きの身動ぎ。



思わず笑みがこぼれる。



「伝言を頼みたいのだけど」



微かに迷う気配の揺れを感じる。



「大丈夫よ。
任務放棄にはならないわ」



しばらく何もリアクションがない。



寝た?



こんな事を考えるほど暇だ。



カタン。



微かに屋根から音がする。



了承の意だ。



「庭師に伝えなさい。
明日は中庭の館の使用人全員を使い
ここの庭園の手入れを全てしなさいと」



何かが音もなくどこかへ去る。



それと入れ替わるように1人の気配がする。



「七。尋問は?」



スルスルと紐をつけた巻物が降ろされる。



喋ってよ。



大人しく受け取ると
紐をとり中身を見る。



ニィッと釣り上がる唇は悪くない。



面白い時代の幕開けよ。
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