間宮さんのニセ花嫁【完】
今日は会社のお得意様に新サービスのソフトウェアを発表する日だ。上手くいけばそのまま契約に辿り着くだろう。
今回は間宮さんとペアで進めてきた案件ということもあり、相手の会社への打ち合わせは私が主軸として進めていくことになった。
流石に直ぐ隣に間宮さんがいてフォローはしてもらえるとはいえ、大人数の大人の前で一人で話すのは緊張する。
「佐々本、資料全部配ったか?」
「はい、大丈夫です」
営業先の会社の会議室を借り、私は各テーブルを回って作ってきた新しいソフトの機能が書かれている資料を社員の方に渡していく。
そうして全員に回ったのを確認すると私はモニターの前に立ち、間宮さんとアイコンタクトを交わす。
とにかく練習通りにいけば大丈夫なはず。
すると私は自分の手元を見て一瞬首を捻った。手元にあるはずの発表用の資料が足りないのだ。
直ぐさま顔を上げて社員の人数を確認する。すると以前聞いてた人数よりも数が多いことに気が付いた。
その為用意していた分の資料は全て配り終えてしまい、自分の分がなくなってしまったようだ。
「(どうしよう……一応モニターがあるからそれを見ながら出来るけど……)」
しかし思いがけないハプニングで私の頭は真っ白になってしまい、その場に立ち尽くすことしか出来なくなる。棒立ちしている私に社員の方たちは不思議そうに顔を見合わせる。
あぁ、駄目だ。ずっと練習してきたのに何も思い出されない。
と、
「今回はマルチメディアに対応した新サービスのご説明に参りました。今入れてもらっているソフトウェアとの連携も出来ますので、まずは機能の方を佐々本からご説明させていただきます」
間宮さんの声が耳に届き、目を向けると彼の視線と目が合った。「大丈夫か?」と心配そうにしている彼の顔を見て、真っ白になっていた頭に思考が戻ってくる。
間宮さんが概要を言ってくれたお陰で資料の内容を思い出してきた。そうだ、モニターを見ながら話せるようにと資料の内容は頭の中に叩き込んできたんだ。
彼の方を見て頷くとゆっくりと深呼吸をする。そして会議室を見渡すと頭の中がスッキリとして何から話していいか内容を整理することができた。
うん、大丈夫。私は余裕を取り戻し、無事に発表を進めることが出来た。