間宮さんのニセ花嫁【完】
「最後に決めたのは私なので。間宮さんは責任取らなくていいんですよ」
「……」
「会社だとみんなの上司だし責任取る立場かもしれませんけど、今は一応……その、婚約者同士?ですから」
うわ、人前で口にするとこんなにも恥ずかしいのか、『婚約者』という言葉は。
羞恥に打ち拉がれていると間宮さんはそんな私の言葉に「そうだな」と納得してみせた。
「確かに今の俺は飛鳥の上司じゃない。だから素直に応援させてくれ」
間宮さんの笑顔を見てると何でこんなにもやる気が出るんだろうか。
「な、なんか元気出てきちゃいました!」
「それは良かった、あんみつ食べていいぞ」
「ありがとうございます!」
食べ損ねたチェリーを口に運ぶと甘酸っぱい果汁が口の中で弾ける。これを食べたら帰ってもう一度だけ復習して、今日は明日に控えて早く眠りにつこう。
今までの私がしてきたことに自信を持とう。隣に間宮さんがいてくれると素直にそう思える。
「(今、無理せず前を向けた?)」
不思議だな。
「飛鳥、口に付いてるぞ」
「っ……」
不意に名前で呼ばれ、顔を上げると間宮さんの右手が私の口元に伸びてくる。そして口に付いていたと思われる餡子を取るとまるで子供を見守るような温かい目で微笑んだ。
「あんみつは逃げないからゆっくり食べろよ」
「な、なっ……!」
「どうした?」
「〜〜!」
だから、そういうことするときは事前に言ってからにしてほしいと何度も!(言っていない)
「可愛らしい彼女さんですね」
「はい、もう直ぐ籍を入れるんです」
淡々と店員さんと会話をする間宮さんにも顔を赤くする私は一瞬お茶会のことを忘れかけて、何処かの妄想の海に飛び込んでしまいそうになった。