間宮さんのニセ花嫁【完】



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飛鳥がお茶会へ向かって一時間が経った。きっと客の数も多いはず、初心者がいきなり主催者の亭主の代わりをするとかなりの労力と集中力を使うことになる。
普段の仕事ぶりを見るに飛鳥にはその二つは携わっているとは思うが一つ心配なことと言えばこの間のように突然のハプニングに弱いところだろうか。


「こんなところにいたのね」


聞こえてきた声に我に返ると手にしていた華を置いて顔を上げる。
並べられたススキやリンドウなどの秋を感じさせる草花の前に腰を下ろした母は「珍しいですね」と、


「貴方が花を生けるなんて。久しぶりに見ました」

「……少し考え事をしていたんだ」

「飛鳥さんのこと?」


まるで考えを見透かしているかのように図星を突いてくる母の言葉に軽く笑いが込み上げてくる。
普段から何も考えていないようで観察眼はきっと自分よりも優れている。


「急にうちの事情に巻き込んで大変な思いをさせてしまったんだ。心配にもなる」

「そうね。でも飛鳥さんは本当に努力家ですね。そうでないと母はチャンスをくれませんよ」

「……うん」


自分という人間がこんなに嫌になったことはない。彼女の人の良い部分に漬け込み、自分の私利私欲のために利用している。
彼女が直向きに努力を続ければ続けるほど、その罪悪感は増すばかりだった。


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