間宮さんのニセ花嫁【完】
『最後に決めたのは私なので。間宮さんは責任取らなくていいんですよ』
それでも、俺は君への償いを一生背負い続けることだろう。
「母さんは飛鳥のこと好きだよな。いきなり連れてきたから驚いただろ」
「それはそうよ。でも千景が連れてきてくれた子ですから」
「……」
その言葉を聞いて自分が大人になったことを実感する。きっと昔の俺にはこんな声を掛けてはくれなかっただろう。
過去を振り返っても後悔しかなくて、これからも後悔を重ねていくしかない人生。それでも他の誰かが傷付くぐらいなら自分がその代わりになればと思っていた。
願わくば、飛鳥がこのことを後に後悔しなければ良いのだけど。
「あの簪、持っていたんですね」
「……」
飛鳥にあげた赤い花の簪のことを思い出す。繊細に作られたつまみ細工の簪を手にしたのは久方ぶりだった。
「捨てるのもどうかと思ったから。だけどきっと彼女に似合うと思ったんだ」
「ええ、似合ってました。凄く」
彼女の頭を紅く染め上げたその簪をつける"はずだった"人はもういない。
「千景、貴方はもう……」
俺が鋏を手に持ち、青紫色のリンドウの茎を切ると言葉を紡ぎ掛けていた彼女は口を閉じて首を横に振る。そして「夕御飯の支度するわね」というと腰を上げて部屋を後にした。
部屋から見上げた空はもう秋の匂いが漂っていた。