間宮さんのニセ花嫁【完】
───────────────────
────────────
腕が辛い、視界が霞んできた。何度も口にしたお茶の種類や茶道の知識を語る口はもう舌が回らなくなってきている。
そのどれよりも辛いのが、周りの人の厳しい視線。
「彼女、千景さんの婚約者なんですって」
「え? 誰がそんなことを」
「梅子さんが紹介してたのよ」
形ばかりの亭主は梅子さんが果たしてくれているものの、その役割のほとんどは私のものだった。今日来てくださったお客さんに挨拶をし、和菓子などの説明をすると抹茶作りに入る。
梅子さんが私のことを皆さんに紹介するときに「息子の婚約者」だと説明するので、周りの評価が一気に厳しくなる。これが間宮の人間になるということの難しさなのだろうか。
「(指が、震える)」
私が失敗したら間宮さんどころか、間宮家の評価に直結する。そんな重みを今まで梅子さんも桜さんも、間宮さんだって背負ってきたんだ。
「若い方だけど大丈夫なのかしら。千景さんと釣り合っていないような」
「今からでもうちの娘を紹介した方が……」
「だったらうちの子を……」
茶を点てている間、嫌でも耳に入ってくる小言に集中力を奪われる。すると梅子さんが咳払いをしたのを聞いて彼女たちは口を慎んだ。
さっきから梅子さんは厳しく言われていても私を前に立たせることをやめなかった。私が茶を点てやすい環境を作り上げてくれている。今はそんな彼女の存在が心強い。
これが家族になるということ。