間宮さんのニセ花嫁【完】
「あら、可愛らしい簪」
その言葉に顔を上げると私の目の前に座っていた女性が咄嗟に自分の口に手を当てる。
無意識の言葉だったのか、それとも本音だったのか。どちらにせよ、私に向かって告げられた言葉には間違いなかった。
「(簪……)」
間宮さんが家を出る前に頭に挿してくれた。そうだ、今私は一人で戦っているんじゃない。
『俺が思うに飛鳥は自分が思ってるよりも強い』
『飛鳥のいいところは笑っているだけで周りを明るくしてくれるところだと思う』
私のいいところを沢山褒めてくれた。そう言ってくれた彼の為にも、自信を持って挑みたいと思った。
「ありがとうございます!」
久しぶりに張り上げた声はお腹の底から出て、茶室に響き渡った。
茫然としている女性と呆れた表情で溜息を吐く梅子さんの姿が目に入る。しかし私は漸く今日一番の笑顔を浮かべることができた。
私は素早く茶筅を掻き混ぜると上手く泡立った抹茶をお客さん宛に出した。