間宮さんのニセ花嫁【完】



百瀬さんは小鉢のきんぴらごぼうを平らげると「んー」と唸ってみせた。


「やっぱり母さんのご飯美味しいー。最近コンビニ飯ばっかりだったから身に染みるなぁ」

「ふふ、沢山作ったから一杯食べて?」


私の向かいの席で朝食に舌鼓を打つ彼のことをジッと観察する。間宮さんと髪の色は違うけれど顔のパーツが所々似ている。しかし百瀬さんの方が筋肉質でがたいがしっかりしている。
何よりも間宮さんが人を和ませるような笑顔を見せるのに対し、百瀬さんは周りを明るくするようなハツラツな笑顔を浮かべる。


「話しながら食べると喉に詰まらせますよ」

「あはは、久しぶりの実家ではしゃいじゃって」


百瀬さんに対する梅子さんの態度も普段よりも柔らかく見えるのは私の気のせいだろうか。
しかし彼の顔を凝視すると再び頭を捻る。私、何処かでこの顔を見たことがあるような……

何処でだっけ?


《大人気スイーツビッフェに来ましたー! それにしても女性のお客さんが沢山いますね》


スイーツという単語に惹かれて付いていたテレビ画面に視線を逸らす。すると私はそこに映るスイーツの数々よりもそれを紹介する男性レポーターに目が止まる。


「あら素敵、ホテルビッフェなんて暫く行ってませんねぇ」

「このロケの時招待券貰ったから母さんに譲るよ」


目の前の現実が受け入れられないって本当にあるんだな。どう見てもテレビに映るその男性が目の前にいる百瀬さんと瓜二つなのだが、私は幻か何かでも見ているのだろうか。
テレビの端に表示されているテロップには『大人気アイドル、朝霧百瀬』と書かれてあった。


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