間宮さんのニセ花嫁【完】
「えぇ!? これって百瀬さんですか!?」
「あ、やっぱり気付いてなかった」
反応薄いと思ってたんだよなーと驚いている私を見ながら百瀬さんは気付いてもらえた嬉しさからか笑みを漏らす。
しかも朝霧百瀬って何処かで聞いたことがあると思ったら、弥生が一番好きなアイドルじゃん!
えぇ、ということは間宮さんの弟は大人気アイドルグループのメンバーってこと!?
「なんか新鮮ー、若い子には知られてると思ってたけどもう少し頑張らないとな」
「す、すみません、普段テレビは見ないものでして」
家族に芸能人までいるって、やはり間宮家恐るべし。改めてその事実に耽っているとずっと沈黙を貫いていた間宮さんが口を開いた。
「それで、どうして帰ってきたんだ?」
その言葉には彼らしくない、棘のある含みがあった。
彼からの指摘を受けた百瀬さんは変わらずヘラリと頰を綻ばせる。
「一日オフが出来たから気が向いただけだよ」
「こんなに忙しい時期にか?」
「寧ろ正月は一日も休みが取れそうになくて、だから今日は休みにしてもらったんだ」
それに、と彼の視線が私に向けられた。
「兄さんが結婚したって聞いて、奥さんがどんな人か気になったんだ。義理とはいえ姉弟になるわけだし」
「っ……」
まるで見定められているようなその視線に思わず体が硬直する。するとその視線を遮るように間宮さんが百瀬さんのことを睨みつけた。
二人の間に流れる険悪なムードに普段美味しい桜さんの御飯が上手くお腹に入っていかない。
「(なに、どういうことなの……)」
二人の冷たい眼差しの間に挟まれた私は胃がきゅうっと縮こまる思いだった。