間宮さんのニセ花嫁【完】
「そう、百瀬くん帰ってきたの」
テーブルの上に運んできたお茶を並べると紗枝さんは畳の上に腰を下ろした。
またお使い途中で家に上がらせてもらうことになってしまい、私は「すみません」と頭を下げた。
「知ってるんですか、百瀬さんのこと?」
「勿論、千景と幼馴染ってことは百瀬くんともそうだから」
「あ、そうか」
ふふ、と口元に手をやって微笑む彼女の薬指に嵌められたダイヤの指輪。それは正志さんとの婚約が決まったという証拠だった。
その話を聞かされたのは私が新婚旅行で買ったお土産を届けにきた時だった。丁度その時は正志さんも一緒で無事に親に結婚を認めてもらえたと報告を受けたのだ。
あんなに渋っていたお父さんをどうやって納得させたのかを聞くと、
「母がね、『間宮さんちの千景くんが結婚した』って聞いて慌てて父を説得したのよ。どうやら母も千景に先越されると思ってなかったのね」
「は、ははぁ」
「このままだと今度はうちがご近所から『娘がまだ結婚してない』っていう目で見られる事に耐えきれなかったの」
まさか間宮さんの結婚は紗枝さんと正志さんをくっつけるだけはなく、結婚まで早めてしまう効果があったらしい。
私はそのことに感心しながらも間宮さんが望んでいた一番の結果になったことに心から喜んだ。