間宮さんのニセ花嫁【完】
そんな幸せほやほやの彼女でさえも百瀬さんの名前を聞くと不安そうな表情を浮かべたのを見て、やはり何かあるのかと勘付く。
「あの、千景さんと百瀬さんって仲悪いんですか?」
「え、どうして?」
「朝食の時の空気があまり良くなくて」
私が素直に相談すると彼女は「やっぱり」と手に持っていた湯呑みをくるくると回した。
「血は繋がっていてもタイプが違うというか、性格が合わないというか」
「それはなんとなく……」
「それに、あの二人は昔から何かと競わされてきたから」
「え?」
競わされてきた? 彼女の言葉に二人の過去がどんなものだったのか、想像が付かなくなる。
彼女は一瞬話すかどうか迷う様子を見せたが、隠していても仕方がないと踏んだのか、二人が子供の頃の話をしてくれた。
「長男は千景だったけど初めから跡継ぎに決まっていたわけじゃなくて、相応しい方を選びましょうって話だったみたい」
「それって……」
「二人とも梅子さんから厳しく稽古を付けられて、千景も優秀だったけど百瀬くんは元々才能があったのか何でも上手くやれたの」
間宮さんの誕生日、飾り付けを手伝ったトロフィーや表彰盾に書かれた第二位の印字。それはまだ上に一位がいるということ。その一位が弟の百瀬くんだったというのなら。
「梅子さんは今でも百瀬くんの方を跡継ぎにしようと思ってたって噂もあったし、それでギクシャクしてた時期があってね」
「……どうして百瀬さんはアイドルになったんですか?」
「高校の時スカウトされたって言ってたけど、元々家を出たいって思ってたみたい」
もし間宮さんが跡継ぎになった理由の一つに百瀬さんとのことがあったとしたら、彼は百瀬さんを跡継ぎにさせないために自分が家を継ぐと言ったんだとしたら。
彼が「人のため」と話していたことがまたここでも深い繋がりを見せた。
「(そのことを百瀬さんは知ってるのかな)」
二人のすれ違いを直してあげられたらいいのだけど。