間宮さんのニセ花嫁【完】



焼き立ての鯛焼きを一口頬張ると粒餡の甘さが口の中に広がる。


「粒餡好き?」

「うん、どちらかといえば」

「良かった、うち兄貴以外みんな粒餡派」


あれ、朝は間宮さんのこと「兄さん」って呼んでいたような。私の視線に気付いたのか、「あー、これね」と彼は恥ずかしげに頰を掻いた。


「ばあちゃんの躾、人前ではそう呼べって。けど飛鳥ちゃんはどちらかといえば身内だしな」

「……」

「ん? なんか飛鳥ちゃんって言いにくいな。あーちゃんでもいい?」

「い、いいけど……」


この距離の近付け方、既視感があるなと思ったら柳下くんだ。あまりのコミュ力の高さに心が折れそうだ。
というか芸能人ってこんなに変装もせずに堂々と歩いていいんだ。地元だからというのもあるのかもしれない。


「兄貴とあーちゃん、付き合って間も無く結婚したんだってね。母さんに聞いた」

「そ、そうだけど」

「兄貴家継ぐの焦ってたからなぁー。変なしきたりに付き合わせて悪いな」


所々間宮さんと似ている口調。そんな兄弟の証拠を見つけると血の繋がりを色濃く感じた。
百瀬くんからは間宮さんに対する壁のようなものは感じられず、どちらかというと距離を置いているのは間宮さんの方なのかもしれない。


< 183 / 309 >

この作品をシェア

pagetop