間宮さんのニセ花嫁【完】
二人して実家に帰るとたまたま何処かに出掛けようとしていた間宮さんが靴を履いているところだった。彼は私を見るなり安堵したように表情を綻ばせた。
「良かった、遅かったから迎えに行こうと思ってたんだ」
「すみません、紗枝さんの家でお茶していました」
「そうか……」
彼の視線が私から隣の百瀬くんへと移った瞬間、彼の瞳の熱が失われる。
ピリついた空気感に私は二人の顔を交互に見つめることしか出来なかった。
「百瀬、母さんがずっと探してたけどどこに行ってたんだ?」
「兄貴に関係ないでしょ」
「俺に関係なくても母さんが」
「他の人の名前を出さないと話せない人とは口を利く暇ないから」
「……」
先程とは打って変わって百瀬くんの口調にも威圧感があり、二人の関係が想像以上に険悪なものだと知る。
一人間であわあわと口を動かしていると間宮さんが「帰ってきた本当の理由はなんだ?」と尋ねた。
「何を疑ってるのか知らないけど、兄貴とは関係ないから。まぁ、少しは感謝してほしいとは思うけどな」
「感謝?」
「俺のお陰で跡取りになったのに何もないからさ」
え、と彼の顔を見ると間宮さんのことを嘲笑するように口元を歪めている。