間宮さんのニセ花嫁【完】
「少し気になることがあって調べていただけです。それより間宮さんの方が忙しいんじゃ」
「俺は引継ぎがあるから仕方ない。佐々本も休めるときにちゃんと休めよ」
「ありがとうございます」
それじゃあと資料室を後にしようとする彼を思わず引き止める。こちらを振り返る彼だが勢いで声を掛けてしまったため慌てて思考を巡らせて場を繋ぐ話題を探す。
「そ、そういえば、間宮さん昨日何してました?」
「昨日か?」
「え、ええ……」
私は一体何を尋ねているんだと思いつつ、本当はあの女性との関係を本人の口から聞きたいと言う本音が口から飛び出してしまった。
昨日、どうして元恋人である彼女と会っていたのか。何を話していたのか。間宮さんが高校の担任の先生と付き合っていたというのは本当なのか。
彼は暫く黙った後、ふっといつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「昨日はずっと家にいたよ」
「……本当、ですか?」
「あぁ、書類を片付ける仕事が溜まっていたからな」
ずっと、その言葉に私は知りたいと思うことさえも罪なのではないかと何も言えなくなった。
あの人のこと、私に話すつもりはないんだ。それはそうだ、だって私は偽物の花嫁なのだから。
離婚してしまったら、赤の他人になってしまうのだから。
「何かあったか?」
そう尋ねてくる彼に首を横に振るとぽっかりと空いてしまった胸を笑顔で誤魔化した。