間宮さんのニセ花嫁【完】



土曜日、綺麗な着物を桜さんに着付けてもらった私は参加する茶道教室の準備を進めていた。


「いつもは先生一人に生徒が三人くらいついて教えるから飛鳥ちゃんのペースでゆっくりね」

「は、はい」

「話は向こうに通してあるから普通に名前を名乗るだけで大丈夫よ」


全体に菊をあしらった藤色の生地はいつもより私を大人っぽくしてくれているような気がした。彼女が私の頭に付ける髪飾りを悩んでいるのを見て、私は徐に間宮さんから貰った簪を取り出した。
藤色の着物とは合っていないように感じる紅色だが、桜さんも彼から貰ったことを知っているからか「それがいいわね」と微笑んで送り出してくれた。

こうして人様の元へ間宮家の代表としていくのは初めてだ。その為梅子さんの試験があったお茶会よりも変な汗を背中に掻いてしまっている。
しかし頭に挿したこの簪があるお陰で彼に背中を押されているような気持ちになれる。


「間宮飛鳥です。桜さんの代理で来ました、本日は宜しくお願いします」


教室の会場となる市民館に着き、講師役の方々に挨拶をする。ほとんどの人は桜さんと同世代かそれ以上で、私だけが一層若いように思えた。


「間宮って、千景さんの奥さんってこと?」

「結婚したって話は聞いていたけど」

「結婚するまでは茶道の経験がなかったって聞いていたけど大丈夫かしら」


周りから聞こえてくる戯言をぐっと抑える。仕方がない、ここじゃ私が一番の新入りなのだから。
とにかく今日は間宮家の名前が汚れないように誠意を尽くして周りの人に認めて帰ってもらおう!

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