間宮さんのニセ花嫁【完】
二人が私の心情を汲んで慰めの言葉を掛けてくれる。しかし私はその言葉に首を横に振ると「もうこれ以上は騙しきれない」と口を開いた。
「違うんです……実は……」
私がその事実を口にすると、二人が今日一日で一番の大声を同時に上げた。
「「偽装結婚!?」」
正志さんだけではなく紗枝さんまでも声を上げ、テーブルの上にあった湯飲みが勢いで倒れそうになるのを一斉に防いだ。
二人はあんぐりと口を開けたまま顔を見合わせると私に確認するように尋ねる。
「それって、」
「ほ、本当なのか!?」
私がゆっくりと頷くと彼らは「全く気付かなかった」と言葉を漏らした。
「その、騙していてすみません。だけど千景さんが家を継ぐためにはどうしようもなくて。他の人には黙っていてもらえると」
「それは勿論だけど……これからどうするんだ?」
「……来月、千景さんと離婚する体で進めるつもりです。なのでそれが終わったらもう……」
だから、と私は一拍置いて話を紡ぐ。
「もし千景さんと楓さんがまだお互いのことを思い合っているんなら私、何か出来ないかなって」
「……確かに今だったら二人のことに口を出すような人はいないと思う。けど」
「千景さん、この簪を私にくれたんです。私が持っててって」