間宮さんのニセ花嫁【完】
いつか彼の曇りのない心の底からの笑顔が見たい。その為なら私は何でもできる。
「手伝っていただけませんか?」
私は誠心誠意を込めると二人に向かって頭を下げた。
冷たく乾いた風が頬を掠め、ぶるりと身を震わせる。冬の営業はどうしてもまだ慣れない。閑散としたホームに佇んでいると「ほら」と缶コーヒーを目の前に出された。
「あ、ありがとうございます」
「寒いよな、早く会社戻ろう」
間宮さんはそう言って自分の分はコートのポケットの中に入れた。
彼がくれた缶コーヒーをカイロ代わりにしているとまだ到着しない電車に思いを馳せる。
「悪い、引き継ぎばっかで。けどこの会社と笹本は合う気がするからさ」
「私も今日挨拶に行ってみて何となく分かりました」
「みんなも突然辞めるって言ったから驚いたよな」
申し訳なさそうな表情を曇らせた彼。間宮さんが会社を辞めるまで一ヶ月が迫っていた。それと同時に私たちの契約終了もあと少しである。
相変わらず仕事場だと私のことを苗字で呼ぶ間宮さんにオンとオフがしっかりしているなと思いながら、ふと頭に浮かんだ疑問を白い息と共に吐き出した。
「会社を辞めた後はどうするんですか?」
「ウチの流派を広める為に周りに指導したり、かな。弟子を取ったり」
「え!? 弟子取るんですか!?」
「そんなに驚くことか?」