間宮さんのニセ花嫁【完】



また社員がチョコレートを渡しに来たのかと身構えた間宮さんは私の姿を見るなり分かりやすく安堵の表情を浮かべた。


「何か用事か?」

「えっと……弥生と私でチョコを準備したので、良かったら」

「あぁ、ありがとう。戻ったらいただくよ」


同じ部署の私たちからのチョコは毎年必ず受け取ってくれる。いつもは同じ部署でラッキー程度に思っていたけど、今年はそれが凄くありがたかったことに気付いた。
私が一人モジモジしているからか、彼は「どうした?」と様子を伺うように尋ねる。ええい、いけと言わんばかりに勢いよく後ろに回していた手を前に出すと手に持ってきたものを彼に差し出した。


「こ、れは……私からのなんですが!」

「……チョコレートか?」

「えぇ、まぁ……あ、全然下心はなく!」


お世話になったので!と慌てて付け足すと彼がおかしいように笑った。


「佐々本からのものを受け取らないわけがないだろ」

「(あ、……)」


さぞ当たり前のように受け取ってくれたチョコレート。その言葉の意味は「私が同じ部署で働く部下」だからなのか、「他に特別な気持ちがあるから」なのか。
ううん、今は変に期待するだけ虚しさが残るだけだ。


「けどお返しな、来月だよな」

「あ、それは……」

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