間宮さんのニセ花嫁【完】
既に間宮さんが退職している来月のホワイトデー。お返しを貰おうとするならばその日に予定を合わせる必要がある。
しかし来月になってしまえば私たちは夫婦でも何でもなく、ただの部下と元上司の関係。そんな二人がホワイトデーに会うというのも変な話だ。
だから、
「あの、こっちは下心があるんですけど」
「え?」
「今週の日曜日、買い物に付き合ってほしくて」
初めてこのような誘いを彼にするので自分でも笑ってしまうくらいに緊張していた。むしろチョコを渡すことよりも緊張していたかもしれない。
「それをホワイトデーのお返しにして欲しいんですけど、駄目ですか?」
「いや、構わないが。そんなのがいいのか?」
「いいに決まってます! それに……」
それに、
「最後の思い出、というか……」
間宮さんとのこの半年間の出来事、その全てを私は後悔せずに終わらせたい。きっと「この最後」を超えたら、私は半年のことをいい思い出のように後でも語っていけるはず。
私の提案に初めは驚いた間宮さんだったが、元から答えは決まっていたのか「いいよ」と、
「その代わりその日に何かお返しさせてくれないか? 何でもいいから」
「分かりました、考えておきます」