間宮さんのニセ花嫁【完】
無事にデートの約束を取り付けることが出来た私は「それじゃあ先に失礼します!」とバクバクと跳ねている心臓を押さえながら屋上を後にした。
数日後、彼と約束したデートの日になり、私は自室の全身鏡で今日の着ていく服装を吟味していた。折角のデートなのだからお洒落をしていきたい。というよりも格好いい間宮さんと並んでも遜色のない格好をしていきたい。
昨日から選んでいた服を三周したところで彼からスマホに連絡が来る。財布などを鞄の中に入れると鏡台のテーブルに置いてあった結婚指輪に手を伸ばした。
一度右手の薬指に嵌め、天井に向けて掲げる。部屋の明かりに照らされて中央のダイヤが輝き目が眩む。
「(私はこれを売ることも、持ち続けることも出来ませんよ)」
いつか間宮さんに言われたことを心の中で返事すると、指輪を外しテーブルの上に置く。
外から聞こえる「飛鳥ー」という間宮さんの声に「はーい」と返事をして鞄を持って部屋を出る。
部屋を出る直前に後ろを振り返ると目に入ったのは殺風景な空間だった。
玄関で待ち合わせると間宮さんの車でまずは映画館へと向かう。前々から見てみたいと思っていた百瀬くん主演の恋愛映画。身内が出ている映画を見るのは初めてだという間宮さんと是非見たかったのだ。
そして結果、
「うぅ、凄いいいお話だったぁー!」
「ティッシュ足りるか?」
映画が終わり、ポロポロと涙を流す私にポケットティッシュを手渡してくれる間宮さん。百瀬くんの演技や役も良かったのだが、何よりも映画の脚本がいいと思った。
間宮さんは「恋愛映画好きなんだな」と意外そうに呟く。
「いつもはあまり見ないんです、感情移入しすぎちゃうから」
「あぁ、なるほど」
「でも今回はいつもよりも気持ちが入ってしまって」
元彼に浮気されたヒロインの前に現れた元彼に似た顔の男性。惹かれながらも過去のトラウマから一歩踏み出せないヒロインの葛藤を描いた作品。