間宮さんのニセ花嫁【完】
手足が短いからマンチカンだろうか。愛くるしい仕草でガラス越しにいる私に近付いてくる子猫に「はわぁ!」と感嘆の声が漏れた。
すると間宮さんが猫を眺めながら懐かしむように昔の話を語り始めた。
「そういえば小学生の頃、百瀬が野良猫拾ってきてばあちゃんに怒られたことがあったな」
「え、どうなったんですかそれ」
「公園で一緒に育ててくれって俺を頼ってきてたな」
過去の話をしたがらない彼の口から聞けた幼少期の百瀬くんとの話。きっと二人の関係が険悪になる前のことだから懐かしい話のように口に出来るのだろう。
「結局それでも世話が出来ないってなって、百瀬が自力で里親を探したんだ。手作りのチラシ作ったり集会で全校生徒の前で呼び掛けたり」
「なんか百瀬くんらしいですね」
昔から変わらない彼の話を聞いて笑みを溢していると彼がふと「不思議だな」と声を溢す。
「前までは百瀬の話をこんなに笑って出来なかった。ここ数ヶ月で随分と変わったものだ」
「間宮さん……」
「それもこれも全部飛鳥のお陰だな。飛鳥がいなかったらきっと俺は百瀬に嫌われていると思い続けていた。ありがとうな」
「っ……」
そう語る彼が愛おしそうに笑うと私の胸が切なく締め付けられる。
やっぱり間宮さんの笑顔が好きだ。見ている人まで心が温かくなって、彼の為人が伝わってくる。
私が側にいなくてもずっと笑ってて欲しい人。