間宮さんのニセ花嫁【完】
「来週、俺の誕生日なんだけど昔から30までに結婚しないと跡を継げないってことになっててさ。だから早急に婚約者が必要だったんだ」
「え、間宮さん跡継ぎなんですか?」
って、来週が誕生日ってことは……
「うん、まだ他の奴らには話してないんだけど会社を辞める予定なんだ。今すぐってわけじゃないけどね」
「そう、なんですね……」
間宮さんは営業部のエースで若くして係長という役職にも付くほどに優秀な人だ。正直、私が今の会社に勤務し始めてからずっと一緒に働いてきたから、間宮さんがいない職場というものを想像することが出来ない。
だけど前々からそう決まっていたんなら仕方がないことなのかもしれない。
「二十代のうちは好きなことをさせてもらえていたから、この期限はもう先延ばしに出来ないんだ。良ければ他の会社の奴らにはまだ黙っていてもらえると助かる」
「……分かりました。つまり確実に間宮さんが跡を継げるようになるまで、私は婚約者のふりをしたらいいんですね」
「そう、急な話で悪いけどこの話に協力してもらえるなら佐々本のどんな願いも叶えるつもりでいる」
「どんな願いもって……」
いや、この実家の規模を考えると本当に何でも叶えてもらえそう。相当なお金持ちっぽいし。
それに今私も彼氏と別れたばっかりで新しい恋を始める気もないし、半年間の間だけなら上手いことやれるかもしれない。
「でも本当に半年間だけで大丈夫なんですか? 別れたら跡継ぎの話はなかった……なんてことには」
「その時はまた考えようと思っていて、だけど多分一度跡継ぎが決まったらそう簡単に辞めさせられることはないと思うから大丈夫だ」
なるほど、つまり半年したら「ソリが合わなかった」などを理由にして離婚することで結婚をなかったことにできる。事実婚だからお互いの戸籍にバツが付くこともない。
「仕事に支障が出ない程度に協力してもらえると助かる。俺も勿論支えるつもりでいるから」
「……間宮さんはどうして家を継ぎたいんですか?」
「どうして?」