間宮さんのニセ花嫁【完】



勢いで自分の年齢を口にしてしまったが、20代後半にしてバレンタインデーで盛り上がっているのもどうかと思うが。いやしかしポジティブに考えればそう思えるような恋人がいて幸せなのでは?
ポジティブポジティブと来る14日に向けて力拳を作る私を見て表情を綻ばせた千景さんはそっとその腰に腕を回してくる。


「俺も楽しみ」

「っ……」


そして安心したように私の肩に頭を預ける彼にときめいて一瞬心臓が止まりかける。


「な、なな、千景さん?」

「はは、駄目か?」

「だ、駄目じゃないです! むしろウェルカムっていうか」

「そうなんだ?」


その言葉に彼が顔を上げると至近距離で目が合う。あ、これは……と思った時にはお互いの唇が重なり合っていた。
触れるだけの優しいキスにもっとという欲が出てしまいそうになるけれど、ここは間宮さんのご実家でご家族もいるからあまり公にはできない。


「……ごめん、ちょっと浮かれてるみたいだ」

「千景さんも浮かれたりするんですね」

「こんなに可愛い子が俺の為に頑張るって言ってくれてるんだ。浮かれないわけがない」

「っ……」


そうしてもう一度キスをすると同時にタイミング悪く私のお腹の虫が鳴った。あぁ、何故もう少し待てなかったの!? 凄くいい雰囲気だったのに!


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