間宮さんのニセ花嫁【完】
「ご、ごめんなさい……」
「いや、お腹減っただろ。ご飯食べに行こう」
「千景さんは食べました?」
「食べたよ、でも一人で食べるの寂しいだろ」
間宮さんはほらと手を差し伸べるとその手を掴んだ私のことを引き上げ立たせた。
間宮さんは優しくて温かくて、いつだって私のことを大事に思ってくれている。
だからこんなことを考えるのはおこがましいことなのかもしれないけれど、
「(千景さんにとって私って、奥さんなのかな。彼女なのかな)」
正直、一年前に出した自分の答えに今一番悩まされている。
私と間宮さんはとある事情により夫婦のふりを半年間続けていた。
その期間が終わり、想いが通じ合った後に彼から「このまま夫婦として一緒にいるか、それとも一度恋人に戻り仕切り直しするか」も提案された。
その提案に私は「今のままでいい」と答えたのだけど、
「(実際あの頃から夫婦の定義があやふやだったし、正直今もどっちかというと夫婦というよりも恋人っぽいよね)」
だけどまだ事実婚にて夫婦であるという契約は結ばれている。やはりあの時もっとちゃんと考えて答えを出せばよかったのかもしれない。
あの時は、間宮さんとこれからも一緒にいられるだけで幸せすぎてそれ以上のことは考えられなかったから。
間宮さんがもし、正式に籍を入れたいと言ってくれたら……なんて、他人任せすぎるか。