間宮さんのニセ花嫁【完】
食事を終えると食器などを取りにまた女中の方々が部屋に入ってくる。
それと同時に三枚の着物が掛けられたラックや化粧道具などを現れた。
「祖母に会う前に少しだけ身を整えないとな」
ハッと我に返る。そういえば私ずっとスッピンで間宮さんと話していた。
「着物は真ん中ので帯は……こっちの袋帯でお願いしようかな。他はおまかせにするよ」
間宮さんは着物と帯を選び終えると「それじゃあまた顔出すよ」と部屋を後にする。
女中さんたちによって新しい着物に着替えさせられる。その間に私はこの家のおける自分の身の振り方について思考を巡らせていた。
「(このお手伝いさんたちも私のことを間宮さんの婚約者だと思ってる。精々騙すのは間宮さんの家族だけだと思ってたけど……)」
これって私が考えていたよりも大変なんじゃ……
ぎゅうっと強く帯を締められ、肺が窮屈になる。寝間着と違ってしっかりと着付けられるから普段から着物を着慣れていないと苦しくて仕方がない。着物を着るのは成人式で着た振袖以来かもしれない。
「あの、間宮さ……当主の方ってどんな人ですか?」
「大奥様ですか?」
少しでも役に立てばと、着付けされている間に今から会うであろう間宮さんのお婆さんのことにお手伝いさんたちに尋ねる。
「凄く家族思いな方ですよ。千景様も昔から酷く懐いてましたから」
「……お名前は」
「梅子さま、です」
締めますよ、という合図と共に再び帯が締められ、「ぐぇっ」と女とは思えない声が飛び出した。
取り敢えず今はその梅子さまに会って間宮さんのお嫁さんとして認められるのが第一ということか。