間宮さんのニセ花嫁【完】
着付けが終わるとそのあとはメークと髪の毛を整えてもらう。人に化粧をしてもらうのは初めてだった為緊張していると、その間に間宮さんが部屋に戻ってきた。
「あ、悪い。まだメーク中だったか」
「いえ、もうほとんど終わってるので大丈夫ですよ」
あとは口紅だけです、とメークを担当していた女性が手に取った口紅の色を見て間宮さんが「待って」と声を掛ける。
そして数あるルージュの中から彼女が持っていたよりも明るいピンクの口紅を選んだ。
「着物とは合わないかもだけど、彼女は明るい色の方が華やかに見えていいと思うから」
間宮さんは私の前に腰を落とすと頰を掴んで上に向けさせる。至近距離に彼の顔があって目が逸らせない。
「ま、間宮さ……」
「口閉じて」
「っ……」
彼の言う通りに口を結ぶと彼が持ってきた口紅で私の唇をピンクに彩った。まさか間宮さんに口紅を塗ってもらう人が来るとは、緊張が顔だけぶるぶると震えてしまう。
彼の合図で目を開くと間宮さんが私に鏡を持たせてくれた。
「うん、やっぱりこっちの方が似合うな」
「……な、なんか自分の顔じゃないみたいです」
「そう? 会社でもいつも綺麗にしてると思うけど」
「へっ……」
間宮さん、そういうこと普段から思ってくれているんだ。一瞬自惚れそうになるが周りにお手伝いさんたちがいることを思い出して首を横に振る。
いやいや、今のは周りに人がいたから敢えてカップルに見せようとわざと惚気てみせたわけで間宮さんの本音ではなく……
納得したり肯定したり、私大忙しだな。