間宮さんのニセ花嫁【完】
「じゃあ急ぎで悪いけど行こうか。祖母も朝の散歩から帰ってきたみたいだから」
「は、はい!」
私は自分を着付けてくれたお手伝いさんたちにお礼を言って頭を下げると間宮さんに手を引かれて部屋を後にする。
私が眠っていた部屋は丁度中庭に面していたのか、部屋を出ると庭に沿って長い廊下が続いていた。
昨晩は慌ただしく通り過ぎていたし暗かったから分からなかったけど、本当に大きな家なんだな。
「間宮さんはずっと実家暮らしをされてるんですか?」
「大学を卒業するまでかな。今は一人暮らしだけどそろそろ実家に帰ろうと考えてる」
実は俺も帰ってくるのは久し振りなんだ、と懐かしむように中庭を眺める彼の横顔に違和感を覚える。
すると不意に間宮さんがこちらを振り向いて私のことを足のつま先から頭のてっぺんでを舐めるように見つめた。
と、
「佐々本の和装姿を見るのは初めてだな。よく似合ってる」
「あ、ありがとうございます」
「出来ればほかの会社の奴らにも見せてあげたいくらい可愛いけど、我慢してくれるか」
「っ……」
キューンと胸が苦しく締め付けられる。思わず口から「うっ」と声が飛び出た。
「ま、間宮さん……何か合図をください」
「合図?」
不意の胸キュンは相手を即落ちさせる危険性がありますよ!
はぁーと未だにドキドキしている胸を押さえながら足を進めていると、間宮さんがとある部屋の前で足を止める。