間宮さんのニセ花嫁【完】
「あれ、もうお開きか……佐々本はどうした」
聞き覚えのある低い声がしたと思ったら、誰かが座敷に入ってきた。
何とかゆっくりと体を起こし振り返ると、ボヤけた視界の中扉の前に立っている男性と目が合った。
「間宮さん、今までどこ行ってたんですか」
「ちょっと電話。明日から盆休みだから忙しくって」
「えぇ、めちゃくちゃ長かったですよね」
「向こうも忙しいらしく、離してくれなくて困った」
上司である間宮さんは柳下くんの質問に答えると再び視線を私へと戻す。
「……で、佐々本はどうした?」
「あぁ、あれは……」
飲み会の間、ずっと席を外していて何も知らない間宮さんに事情を全て話す弥生。誰も話してほしいなんて言っていないのに余計なお世話である。
私がやさぐれている理由を聞いた彼は「そうか」と困ったように呟く。
「それは……色々とご愁傷様だな」
「間宮さんでさえフォローの言葉が見つからないとは」
「う゛っ……」
柳下くんの言葉が更に私の心を抉った。と、同時に目から大量の涙が溢れ出してわんわんと泣き始めてしまう。
「もぉおぉおぉお! どこの誰でもいいから私と結婚して!」
「遂に頭が湧いちゃったか」
「私の気も知らないで!」
というか流石に不味いですって、という柳下くんの合図で私は男性二人に支えられて何とかお店から出ることができた。