間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんが運転する車は数十分走ったのにコインパーキングに駐車した。そこから歩いて数分、とある平屋のお店に辿り着いた。
「ここは……」
「いつもお世話になってる呉服屋さん。頼んでた着物を受け取りに来たんだ」
中へ案内されるとクーラーの冷たい風が首元を攫った。店内には所狭しと様々な色、柄の着物が並べられている。どれもこれも鮮やかなもので見ているだけで視界が彩っていく。
「今佐々本が着てるのもここで買ったものだよ。普段着から礼装まで揃えられてるから昔からのお得意様」
私はまだあまり詳しくないけど一つ一つの柄にも意味があるのだろう。夏祭りのシーズンだからか浴衣もいくつか展示されている。
桜さんが着物の着付け方を教えてくれると言っていたし、触れる機会も多いだろうから私も詳しくなっておきたい。
間宮さんが用事を済ませている間一人店内を見回っていると、お店の店員さんだと思われる着物の女性とすれ違う。
その着こなしや歩き方に惚れ惚れとしているとその女性が間宮さんのことを見つけるなり「あ!」と声を上げた。
「もしかして千景? 久しぶり〜」
「よかった、やっぱりいたか」
間宮さんの知り合いだと思われるその女性は彼に駆け寄ると自然とその腕に両手を添えた。
仲良さげに会話をする二人の姿は遠目で見ていても美男美女と分かり、簡単にその空気感には入ることができない雰囲気が伝わってくる。
「(やっぱり顔がいい人の友達は顔がいいのか!)」
類は友を呼ぶとはこういうことを言うのね。その状況を眺めていると間宮さんがふとこちらを見て手招きをした。緊張しながら小走りで駆け付けると真正面からその女性と目が合った。