間宮さんのニセ花嫁【完】



わっ、近くで見たらもっと綺麗な人だ。目が大きくて肌が白くて、流すように整えられた前髪は艶があり、口元の濃い口紅もよく似合っている。


「こんにちは、早川紗枝です」

「紗枝はこのお店の一人娘で俺の幼馴染なんだ」

「幼馴染というか、最早腐れ縁ね」


紗枝さんは顔を綻ばせながら間宮さんのことを見つめる。遠目で見てても思ったけど、やっぱりお似合いだなぁ。長い間連れ添った相手だからこそ作り出せる空気感が伝わってくる。


「千景、こちらの可愛らしいお嬢さんは?」

「あっ、佐々本明日香と申します。えっと……」


あれ、この際って私なんて自分を紹介したらいいんだろうか。
ここは間宮家ではないから婚約者を偽る必要もないけど、でもお得意様ということであればこれからも会う機会があるだろう。

口を開けたまま固まっていると不意に肩に間宮さんの手が回ってきてぐいっと引き寄せられた。驚いた顔で彼を見ていると間宮さんは迷いなく紗枝さんに告げる。


「俺たち結婚するんだ」


間宮さんは更に私の肩を強く抱いた。彼の発言に紗枝さんは一瞬吃驚したような表情をした後、何処か安心した風に胸を撫で下ろす。


「そう、なの……おめでとう、千景」

「ありがとう。だからお前らも上手いことやれよ」

「もう、大きなお世話です。でもあの千景が結婚なんて……ふふ、何だか不思議ねぇ」


昔を思い出すように微笑んだ紗枝さんに違和感を抱く。間宮さんも様子がおかしいし。
先程までの仲良さげな雰囲気が一瞬崩れ、そして気まずい空気が流れた。


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