間宮さんのニセ花嫁【完】
「どうしよう、会社で合わせる顔がない……」
それどころか、直属の上司にとんでもない失態を見られてしまった恥ずかしさで今すぐ世界から消えたくなる。
とにかくこのメッセージに今すぐ返事をしなければ。しかしあんなところを見られてしまった後でどういう返事を送るのが正解なんだろうか。
どうもお世話を掛けました? 昨日のことは忘れてください?
「(駄目だ、どう返しても失った信用は取り返せない気がする……)」
ベッドの上で着替えもせずに30分ほどスマホを握り締めていると突然スマホが鳴り始めて驚く。
こんな大事なときに何だと確認すると母からの着信だったので慌てて通話ボタンをタップした。
《もしもし、飛鳥起きた?》
「う、うん。今起きた」
《も〜、昨日何回も連絡したのに全然出ないから心配してたのよ》
「ごめん、昨日は色々とあって」
詳細は話せないが電話を出られる状態ではなかったということは確かである。
《飛鳥、お盆の間に家に帰ってくるわよね? いつぐらいになる?》
「え、えっと……多分明日かな」
《ふふ、お母さん、もしかしたら例の彼氏さんをそろそろ紹介してくれるんじゃないかって期待してるんだけど》
「え゛っ……」
通話越しに聞こえた母の声に思わず口から汚い声が飛び出た。
そうだった、そろそろ籍入れるかもって母には話していたんだった……
「え、えっと……実は彼も忙しいらしくって、また今度の休みに連れて行くよ!」
《そうなの? 残念……ずっと長く付き合ってるのに恥ずかしがって教えてもくれないから》
「ご、ごめんね!」
じゃあそういうことで!と私は強引に通話を切ってはぁと長い溜息を吐く。
どうしよう、正直に浮気されて婚約が破棄になったことを話す? それともやり直して元彼両親に紹介する? 出来るならどっちもしたくない!
考えなきゃいけないことが多いのに、まだ昨日の酒が抜けていないのか微妙に吐き気もして頭が痛む。
胃が苦しくてベッドに横になるとまた誰からか通知が来る。それを見た瞬間に一気に脳が覚醒する。
【ちゃんと話がしたい。どうしたら会ってくれる?】
もう元彼に成り下がってしまった男からのメッセージに今日一番の大きな溜息が出た。一体私が何をしたというのだ。
「(問題が山積みすぎる……)」
佐々本 飛鳥、26歳。IT会社に勤める独身OL。
結婚直前に婚約者相手に浮気され、婚約が破棄になった挙句、直属の上司にまで迷惑をかける女。
結婚の夢はまだまだ遥か先のようだ。