間宮さんのニセ花嫁【完】
休日になると間宮家で梅子さんから本格的な稽古を受けることができる。
梅子さんは私たちの結婚を認めないのかと思いきや、それでも稽古はしっかりと付けてくれるところが嬉しいと思う。
午前の稽古が終わり昼食後、部屋に向かっていると途中で桜さんに呼び止められる。
「飛鳥さん、今から時間空いてるかしら?」
「はい、梅子さんの用事が終わるまでは部屋にいようかと」
「良かったら早川呉服店さんまでお届けものお願い出来ない?」
お届けものですか、と彼女の手元を覗き込めばそこにはタッパーに敷き詰められた大量の美味しそうな御萩が。
早川呉服店は前に間宮さんと行ったので場所自体は覚えている。
「分かりました。紗枝さんとも以前面識があるので大丈夫だと思います」
「助かるわー。この間綺麗なお着物頂いちゃったからお礼に。車で送ってあげられないから電車でなんだけど」
「任せてください!」
こう見えて営業周りで外を歩くのには慣れていますから! そう自信満々に告げ、私は桜さんがレトロな色の風呂敷に包んだ御萩を持って家を出ると呉服店を目指して駅へ向かった。
電車に揺られ最寄り駅に着くとこの間の記憶を辿って歩き、暫くして見覚えのある趣深い看板が見えてきた。
と、
「まだお前はそんなことを言っているのか! 俺は絶対に許さんからな!」
「っ……」
遠くからでも聞こえる怒号が町中に響き渡る。見ると私が目指していた紗枝さんのお店の前で年配の男性と若い作業着を着た男性が向かい合って何かを話している。
その隣で二人のことを引き離そうとする紗枝さんの姿を見受けられた。