間宮さんのニセ花嫁【完】
「お父さん、もうやめて! そんな大声を出したら近所迷惑でしょ!」
「こいつが何度言っても分からんからだ。何回出直してきても俺の気持ちは変わらんからな!」
紗枝さんの父親だと思われる男性が作業着姿の男性に向かって険しい表情を向けるとお店の中に入っていく。
落ち込んだように頭を下げていたその作業着の男性はここまで聞こえるほど大きな声で溜息を吐く。
「やっぱ駄目かー。今回はいけると思ったんだけどなー」
「何か考えがあるのかと思いきや、真正面からぶつかるって。お父さんが一筋縄じゃいかないって分かってるでしょ」
「男同士、正面からぶつかれば分かってもらえるかと」
はははと乾いた声を漏らす彼に呆れた表情の紗枝さんは不意にこちらに視線を向ける。
あまりの修羅場に固まっていた私と目が合うと彼女は「あら!」と声を上げた。
「飛鳥ちゃん? いつからそこに?」
「す、すみません! 盗み聞きするつもりは!」
だって思いっきりお店の前で言い合いが行われていたんだもの。ということは紗枝さんのお父さんに結婚を了承してもらおうと頭を下げていた男性は、間宮さんがこの間言っていた……
「お、飛鳥ってもしかして千景の?」
「そう、婚約者さん。こんにちは、飛鳥ちゃん」