間宮さんのニセ花嫁【完】
近くまで来ると男性に興味津々とばかりに全身を凝視される。一応着物の着方には間違いはないと思うが、そんなに見つめられると緊張してしまう。
「お、悪い悪い。挨拶が先だったな。俺、千景の幼馴染の大山正志! 漆塗りの職人やってるんだ。よろしくな」
「さ、佐々本飛鳥です。よろしくお願いします」
ハツラツとした笑顔を見せる正志さんは間宮さんとは正反対の印象が受けた。しかしこの間、間宮さんと紗枝さんが話していた内容から感じ取れたイメージとはそこまでかけ離れていない。
紗枝さんが「今日はどうしたの?」と話し掛けてきてくれたため、私は当初の目的を思い出すことが出来た。
「あ、あの、この間の着物のお礼に御萩を……私じゃなくて桜さんが作ったんですが」
「あら、桜さんが? わざわざ届けてくれたの? ありがとう」
「千景の母ちゃん本当料理上手いよな〜」
二人とも幼馴染ということあって桜さんのことをよく知っているらしい。
無事に目的を達成したので家に戻ろうかと思ったが、紗枝さんが受け取った御萩を見て、
「良かったら一緒に食べない? 丁度お茶にしようかと思ってたの」
「え、いいんですか?」
「ええ、時間があれば」
梅子さんの用事はまだかかりそうだったし、お茶をする時間くらいは取れそうだ。
私は「是非!」と彼女の誘いに乗り、正志さんも含めた三人で少しの間休憩することになった。