間宮さんのニセ花嫁【完】
通された客室は間宮さんの実家の部屋とよく似ていて、しかし人様の家ということで緊張してしまう。
それに対して正志さんは慣れたような態度で黙々とお皿に盛り付けられた御萩の山に手を付けていた。
「こら、そんなに勢いよく食べると喉に詰まらせますよ」
「大丈夫だって。やっぱ千景の母ちゃんの御萩うめーな」
紗枝さんと正志さん、タイプは違うけど二人の雰囲気はとてもお似合いだな。ずっと一緒にいるからか、もはや夫婦のようにも見えてきた。
正志さんは明るくて時々チャラい雰囲気があるが、さっき握手を求められた時に手に漆でかぶれたような痕が沢山あった。それだけ努力する人なのだろう。
御萩を口に運びながら「しかし千景が結婚かー」と正志さんが呟く。
「まさか先越されるとはなぁ。最近まで全然そんな素振り見せてなかっただろ」
「確かにそうね。それほど飛鳥ちゃんが好きなのね」
「っ、え、えっと……」
言えない。実は間宮さんの婚約者候補だった紗枝さんと正志さんが上手くいくように彼が嘘を付いて私と結婚しようとしているなんて……絶対に言えない。
二人は知っているんだろうか。間宮さんと紗枝さんが実は婚約者同士だったって。
「そういえば昔、紗枝と千景って許嫁同士だったよな」
昔を懐かしむように言った正志さんの言葉に私は飛び跳ねるほど驚いた。
紗枝さんは彼の言葉に「そうね」と頰に手を当てて、
「そんな時期もあったかも。でも二人とも全く気にしてなかったわ」
「だろうな。お前ら二人、仲はいいけどすげぇ喧嘩してたし」
「千景とは考え方が真逆だから対立しちゃうのね。お互い頑固だし」
すると私の存在に気が付いた紗枝さんが焦った表情で「ごめんなさい」と謝る。