間宮さんのニセ花嫁【完】
「許嫁って言っても昔の話で、二人とも本気にしてなかったから!」
「あ、大丈夫です。まみ……千景さんから少しだけ話を聞いたことがあったので」
「そう? よかったー」
安心した様子の彼女に対して正志さんは少し浮かない表情をしていた。彼は御萩を食べる手を止めてポツリと小さく呟く。
「でもよ、俺。もしかしたら紗枝の親は千景と結婚させたいのかなって思ってた時期があったから。だから今少し安心してる」
「正志……」
「こういうの、駄目だって分かってるけど! 家柄ってすげぇ大切だってこと今になって痛いくらい実感してるから。だから変だと思うけどありがとうな、飛鳥ちゃん」
真っ直ぐに私を見据えて真剣な顔でそう言った正志さんに私は心の中で首を振った。
違うんです、それを言うのは間宮さんになんです。私は彼に合わせているだけで、全てを受け止めているのは彼の方だ。
最初は彼がどうして他人のために家を継ごうとしているのかいまいちピンときていなかった。
しかし今正志さんからお礼を言われた瞬間、「この時のためだったんだ」とようやく彼の気持ちを知れた気がした。
そして同時に、間宮さんが本当にこの二人のことが大好きで上手くいってほしいと思っていることが伝わってくる。