間宮さんのニセ花嫁【完】
「私からも、こうしてお礼言われるのは変に感じるかもだけど。私たちにできることがあれば何でも言ってね」
「何でも……」
暫く考えた後、私はこの二人しか知り得ないことを尋ねた。
「あの、千景さんって昔どういう人だったんですか?」
「どういう?」
「あんまり昔の話とかしてくれないので」
この間の海で明確に引かれてしまったラインに興味本位で触れてしまう。
二人は顔を見合わせ、「うーん」と首を横に捻った。
「俺が中学の頃からの知り合いだけど、そこまで変わらないような。少しやんちゃしてたこともあったが」
間宮さんの高校生って、それはそれで想像がつかないかもだけど。だけど今の感じだとしたら凄く学生時代もモテていたんだろうなぁ。
「その時は色々あって心配だったけど、けど今こうして千景が前を向けているのも飛鳥ちゃんのお陰かもな」
「ちょっと、正志!」
「あ、やべ」
紗枝さんに注意されて口を閉じる正志さん。その「色々あって」「心配だった」の部分に違和感を抱いてしまう。やっぱり間宮さん、昔に何かあった?
『もう人を傷付けたくない』
昔何があったのか、聞いてみたい気もするけど間宮さんはどう思うだろうか。本当の婚約者じゃないからそこまで知らなくてもいいのかもしれない。
少しでも間宮さんが抱えているものを分かってあげられたら、そうしたらあんなに悲しそうな顔をさせずにいられるのではないか。
「あの、千景さんって……」
そう言葉を続けようとした次の瞬間、スパンッと大きな音を立てて部屋の襖が開いた。