間宮さんのニセ花嫁【完】
「けど今日は時間ないだろうからまた今度取りに来るよ。それまでにいくつかセレクトしてもらってもいいか?」
「任せて! 飛鳥ちゃん可愛いから迷っちゃう」
「あ、あの! 本当にいいんですか!?」
まだ技術も完璧でない私が綺麗な着物を着たところで、まるで着物に着られているような状況になるのでは。
紗枝さんは不安そうにする私に近付くと他の二人には聞こえないような小さな声で囁いた。
「さっき正志の言ってたことのお礼だから気にしないで? それに頼っていって言ったばかりだし」
「紗枝さん……」
私、こんなに優しい人たちに囲まれていいんだろうか。
彼女に何度もお礼をすると紗枝さんの家を出て店の前に停めてあった間宮さんの車に乗り込む。運転席に乗り込むなり間宮さんは心配そうに私の方を見つめた。
「正志に変なこと吹き込まれなかった?」
「変なこととは?」
「……いや、何でもないよ」
帰ろうか、とエンジンを掛けた彼にまた心の境界線を引かれたような気がした。
紗枝さんたちの空気を見てても、やはり彼の過去には触れるべきではないのかもしれない。
「(間宮さんが少しでも笑っていられるように別のことで喜ばせたい)」
その為に私に今出来るのは目の前のお茶会に集中することだ。