新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「結愛、……結愛!」

 母に呼びかけられて、ハッとする。
 ぼんやりしていたらしく、慌てて取り繕う。

「な、なに? お母さん」

 目を泳がせる私に、母はあっけらかんと笑う。

「中村先生が心配なさってたわよ」

『中村先生』と言われ、手に持っていた布巾を思わず握る。

 かなりぼんやりしていたみたいで、知らぬ間に中村先生は帰られたようだった。

「なあに? なにかあったの?」

 母が意味ありげに顔を覗き込んできて、肩を揺らす。

 お話を受けた時に母は近くにいなかったけれど、母にはバレているのかもしれない。

 やっぱり母はすごい。
 小さな変化も見逃さず、隠し事が成功した試しがない。

 それに、結婚となれば母を巻き込む。
 聞いていなかったとは言え、話さないわけにはいかない。

< 10 / 229 >

この作品をシェア

pagetop