新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
辻本さんはどうして栗原さんの付き添いが私なのか、理由は聞かずに彼女が眠るベッドまで案内してくれた。
辻本さんなら、父から事情を聞いているかもしれない。
「今は眠っています。彼女から、五十嵐先生に電話をしてほしいと先ほど伺ったんですよ」
「え……」
彼女、から。
「ええ。心配をしていると思うので、って。「点滴を終えたら帰ります、と伝えれば分かると思います」とだけ言ったら、安心したのか眠ったみたいね」
そうか。だからすんなり彼女の元に案内してもらえたのか。
体調がつらくとも、私の心配をする彼女に胸が熱くなる。
「点滴はあと一時間くらいです」
「はい。それまで待たせてもらいます」
カーテンは閉められ、私はベッドの傍にある丸椅子に腰掛ける。
診察は貧血と疲労だろうか、診察した感じはそうだった。
点滴の内容を見ても、そう判断するのが妥当だ。
今は眠る彼女の顔を見つめ、悔しくて拳を握り締める。
またしても近くにいながら、彼女の異変に気づけなかった。
医師として、何より夫として、自分では不十分であると痛感する。