新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「いつ頃からか、肌で感じていたというか。亡くなったって思えるほど、強烈に悲しい思い出がないというか」
「そう」
「たぶんそれは、お母様を亡くしたばかりの省吾さんと話したから」
17歳、何度か話した。
私は一度もその頃に、彼女に母の話はしていない。
それでも結愛さんは周りから聞いていたのか、私の境遇を子どもの頃から知っていたのだ。
そうだとしてもあの頃の私たちは、たわいもない話をしただけ。
ただ、それで救われていたのは事実だ。
「大切な人を亡くしたら、こうなってしまうんだ、それなら私は亡くしてはいないって」
「そう」