新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
触れてみようと、手を恐る恐る前に出す。
すると突然その手を取られ、胸元に添えられた。
「遠慮しないで」
戸惑いつつ彼を見つめると、頬を緩めた省吾さんが「言いそびれていました」と前置きをして、切り出した。
「大切だからこそ、反動で自ら手離そうとしたのは認めます。だから改めて、私の側にいてくれますか」
真剣な表情で言われ、感激はしたものの、お互いあられもない滑稽な姿は、なんだか決まらない。
茶化そうと動きかけた口先が、彼の続けた言葉を聞いて声にならなくなる。
「愛しています。結愛さん」
見開いた瞳はゆらゆらと揺れ、目頭が熱くなる。
しかし、二人で過ごしてきた様々な経緯が、素直に「私もです」とは言えずに口ごもる。