新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「それは今から『愛し合いましょう』という意味の、ですか」
行為自体は気持ちがなくてもできるものだと、そのくらい心得ている。
新婚旅行で彼が言った「愛し合いましょう」には、行為を指しているだけだと分かっていた。
なぜなら私たちは、お互いに気持ちはないと了承して結婚した間柄だ。
「愛し合うのもいいですが、反動で離れたくなるほどに大切な人を、私が愛していないとでも?」
それは、そうかもしれないけれど。
にわかに信じ難い内容に、うまく飲み込めない。
固まっている私に省吾さんは苦笑する。
「愛を囁かれて話せなくなるのは、ショックですね」
「あの、だって、理解が追いつかなくて」
「では、もう少し砕けて言いましょうか」
「くだ、けて」
彼を真っ直ぐに見つめると、何故だか涙がこぼれそうになる。
飄々となんでもないように話していた彼が、口元に手を当て、その手が震えていたから。
「好き、です。結愛さん」
簡単な二文字なのに、その二文字で体温と鼓動が一気に上がる。
私も彼以上に震える手で、彼の手を掴む。
「私も、好き、です」
「ええ」
見つめ合い、どちらからともなくキスをした。
はにかむ彼が「夢みたいです。実体があるのだと、確認したくて触れたくなる」と、頬を手の甲で撫でる。
くすぐったくて肩を縮めると、再び顔を近づける彼ともう一度キスをした。