新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「母は優しい人でした。怒った顔を思い出せない。怒るような体力もなかったといえば、それまでですが。体が弱かったので」
「そう、でしたか」
「それでも私と弟、二人を産み、育てた。年の近い男兄弟で、大変だったと思います」
「省吾さんが子どもの頃は、やんちゃだったのでしょうか。イメージが湧かないです」
「普通でしたよ。友達と喧嘩をして、服を破いて帰った日は驚かれました」
「それは随分と、やんちゃじゃないですか」
結愛さんは私の子どもの頃を想像したのか、楽しそうに笑う。
「父はあの通り当時から医師でしたから、忙しくほとんど遊んでもらったとかいう記憶がないですね」
その頃の父の話をすると、口が重くなる。
「それでも尊敬なさっているのでしょう? 同じ内科医になられて」
彼女は本質を見抜き、指摘する。
「そうですね。そうかもしれません」
「そうだと思いますよ」
彼女はそうであってほしいのだろうな、と思って敢えて否定をしないでおいた。