新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 ぐうの音も出ない。
 抵抗できずにいると、クククッと笑う。

「人が良過ぎて心配になります。私は初心者の結愛さんを気遣う余裕もなく、身勝手な行動をしました。その結果、結愛さんが意識を飛ばした時は肝を冷やしました」

 省吾さんは私を慈しむように、頬を撫でる。

「もしも病院に連れて行くとなったら、父にこの事態を知られてしまうのかと、自身の保身に考えが及び、自分はなんて自分本位な人間なのだろうとガッカリしました」

「わ、私も、もしあの時点で病院に行くとなったら、遠い知らない土地でお願いしたいです」

「いえ。人命が優先ですよ」

 矛盾を口にする省吾さんに苦笑する。

「こんなにも冷静でいられないのは、結愛さんのせいです。そして自分本位な私は、意識を手放すほどだった結愛さんに、こうして迫っています」

「私はいっぱいいっぱいで、省吾さんがどうだったのか気にする余裕がなくて、ですね」

「気にしないで結構です。ものすごい発言してるのは、わかっていますか」

「だって、不安で……」

「私はその不安につけ入ろうとしていますが、いいのですか。時間が経って行為自体に恐怖心を抱かれる前に、私を求めずにいられなくしたいと思っていますよ」


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