新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「省吾は、母を亡くしてから病院に寄りつかなくてね。そこで働くと、よく決意させてくれたね」
「決意したのは、一応、私なのですが」
ハハハと笑う父は、私の言い分は取り合わないようだ。
誰が父に似ているものか。
謙吾の意見を思い出し、今さら憤慨する。
「省吾と謙吾、二人で働いてくれるのなら私も安心だ」
目を細める父が本当に心から喜んでいるようで、胸が痛くなる。
父は私と結愛さんを見て、楽しそうに笑う。
「こんなにも上手く行くとは思っていなかった」
「中村先生も人が悪いです」
結愛が不平を訴えると、父はますます笑った。
「悪い、悪い。二人とも子どもの頃から好き合っていたみたいだから、きっと上手く行くと」
「は」
「え」
声が重なって、結愛さんと顔を見合わせる。
「結愛さんのお母さんは省吾さんの初恋を引きずっているって仰っていたし。私も省吾は高校生になるのに、結愛さんと話すのを心待ちにしていたのを知っていたから」
これには結愛さんは堪らなくなった様子で、顔を両手で覆った。
私もうなだれて、ため息を吐く。
「全部、知って」
「まあ、そうだとしても最終的に決めるのは、二人だから。しかし上手く行き過ぎて驚いたよ」
ホクホク顔で言われ、もはや呆れて声も出ない。
親とは、こういうものなのか。
いや、私と結愛さんの親が特殊なのだ。