新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
仕事を終えると母が営む小料理屋の手伝いをする。
父を早くに亡くして、母一人子一人で支え合って暮らしてきた。
店はカウンターが6席、座敷は4人座れる座卓が2つある。
抑えめの照明と、趣きのある木のぬくもりを感じる内装。
こぢんまりとした店だが、母の大切な場所だ。
「いらっしゃいませ〜」
入り口から常連のお客さんが入ってきて、胸をときめかせる。
来店したのは中村医院の医院長。
御年58歳。
私が密かに想いを寄せている方だ。
中村先生も早くに奥様を亡くされており、それ以来、お一人でいらっしゃると聞いている。
だからと言って、どうこうなりたいわけじゃない。
ただ、陰ながらお慕いしているだけで幸せだった。
父を早くに亡くしたせいか、同年代の男性に恋をした経験がない。
いつもいつも年上で、それもかなり上の人ばかりを好きになる。
だから自分は結婚しないんだ。
そう思って諦めてもいた。
中村先生は入り口から一番奥のカウンターに腰掛けた。
「いつもの定食でよろしいですか?」
「ええ。よろしくお願いします」
上品に微笑まれ、心が和む。
ダンディなおじさまと形容するのが相応しい、ロマンスグレーの御髪がよく似合っている。
年齢を重ねただけ刻まれた皺は、目尻に集中している。