クローゼットに飛び込んだら、そこはイケメン天国(パラダイス)~これってもしやシンデレラストーリー!?
side ジョシュア




(ようやく明日か……)



アンジェラの言うことはまたしても正しかった。
ライアンは、きっと俺がいなくなったことをまだ報告していないのだ。
ひやひやしながら、身を隠していたのだが、幸いなことに追手らしき者は現れなかった。



もちろん、俺だって用心はした。
お城で仕立ててもらったご立派な服を捨て、以前、俺が着ていたものよりさらにボロっちい、旅人の服に着替えた。
油で後ろに撫でつけていた前髪を垂らし、顔を隠した。
夜になると場末の酒場に繰り出し、状況を聞き込んだ。
しかし、俺らしき者の噂は一言だって耳にはしなかった。



明日、ファーリンド行きの船に乗ってしまえば、ほぼ逃げ果せたと言えるだろう。
ライアンが王に報告したとしても、もう遅い。
ファーリンドに行ってしまえば、さがすのは困難だ。



ただ…少々、心は痛む。
もうファーリンドには戻らないと決めていたのに…
モルドに骨を埋める覚悟だったのに、こんなことになってしまうとは…



いや、気にすることなんてない。
ファーリンドは広いんだ。
オルリアンにさえ戻らなきゃ、何の問題もない。



ただ、オルリアンで生まれたってだけなんだ。
今はもう家族もいない。
どこか、もっと田舎の方へ行って…そうだな、結婚詐欺師なんてくだらない仕事はやめて、心機一転、真面目に生きるっていうのも良いかもしれない。
今更、俺にそんな生き方が出来るかどうか、自信はないが…


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