※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
正しさから目をそらして大瀧をだれも止めようとしないこの空気に、嫌悪感が増していく。
ねえ、ユキ。
こんなの、間違ってるよね……?
「エンプロイドって一生かわいそー」
他人事でしかない心にも思っていないような乾いた声で、隣の舞香が呟いた。
『君のためなら、俺はどうなったっていい』
いつかのユキの声が、耳の奥で聞こえた。
――ユキ。
「もうやめて……!」
気づけば、腹の底から声を振り絞っていた。
思いがけない制止の声に教室中が水を打ったようにしんと静まりかえる。
「え? はのん?」
驚いたような舞香の声が聞こえたけど、それを気にしている余裕は一ミリもなかった。
一歩前に出た私に、信じられないという顔をして大瀧が近づいてくる。
「は? どうした花宮。お前らしくねぇじゃん。エンプロイド庇うのか?」
大瀧が私の腕を掴もうと手を伸ばしてきて、けれど私に届く前にその手を掴んだのはユキだった。
「はのんちゃんに触るな」
怒りは沸点を超えると冷気になるのかもしれない。
静かにそう言い払ったユキの声は、心臓の底に響くほど重く冷たいものだった。
それは、大瀧さえ震え上がらせるほどに。