僕の庭
ふわり、と温かい香りがし、僕は閉じていた目をゆっくり開いた。


目の前には、若い女がいた。
湯気のたった汁が並々とつがれたお椀を捧げ持ち、僕と目が合うとにこりとえくぼを窪ませて笑った。


「よかった。動かないから心配したのよ? これ、飲みなさいよ。あったまるわよ」


ぐいっとお椀を突きつけて言う女に、僕はカラカラに乾いた声で、


「何だ、あんた。どっか行けよ」


と言い吐いた。


「せっかくここまで持ってきたのよ? 飲みなさいよ、すっごく美味しいのよ。そりゃあ、具は少ないけど」


ね? と僕を覗き込むようにした女は、あれ、という顔をした。


「なぁに? 何か辛い事があった?
話、聞いたげる。えーと、名前、教えて」

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